2016/06/13 戦績
人はいざ 心も知らず ふるさとは
花ぞ昔の 香に匂ひける
紀貫之
まあ、確かに悪く無いのですが、原典である古今和歌集の詞書によりますと、長谷寺詣の時にいつも宿泊していた宿に久しぶりに行くと「宿は昔のままなのに、随分と来なかったのねえ」と嫌味を言われ、その嫌味に返歌したのがこの歌でして、宿は昔のままに対抗し「花のにおいは変わらないけど、お前のほうこそ、本当にそんなに俺を待ってたのかよ?ん?」って歌です(笑)。「ふるさと」は故郷では無く、昔馴染みって言う意味なんですね。
「影みれば 波の底なる ひさかたの 空こぎわたる 我ぞわびしき」
「色ならば 移るばかりも 染めてまし 思ふ心を えやは見せける」
いい歌が多すぎて、一つに決めかねる(笑)。
*1:ウィキペディアには、古今和歌集に101首と記載がございますが、102首だと思います。
*2:ちはやぶる 神の御世より 呉竹の 世々にも絶えず 天彦の 音羽の山の 春霞 思ひ乱れて 五月雨の 空もとどろに 小夜更けて 山郭公 鳴くごとに 誰れも寝覚めて 唐錦 竜田の山の もみぢ葉を 見てのみ偲ぶ 神無月 時雨しぐれて 冬の夜の 庭もはだれに 降る雪の なほ消えかへり 年ごとに 時につけつつ あはれてふ ことを言ひつつ 君をのみ 千代にと祝ふ 世の人の 思ひ駿河の 富士の嶺の 燃ゆる思ひも あかずして 別るる涙 藤衣 織れる心も 八千草の 言の葉ごとに すべらきの 仰せかしこみ 巻々の 中につくすと 伊勢の海の 浦の潮貝 拾ひ集め 取れりとすれど 玉の緒の 短き心 思ひあへず なほあら玉の 年を経て 大宮にのみ ひさかたの 昼夜分かず 仕ふとて 顧みもせぬ 我が宿の 忍草生ふる 板間粗み 降る春雨の 漏りやしぬらむ
*3:ちはやふるかみのみよよりくれたかのよよにもたえすあまひこのおとはのやまのはるかすみおもひみたれてさみたれのそらもととろにさよふけてやまほとときすなくことにたれもねさめてからにしきたつたのやまのもみちはをみてのみしのふ かむなつきしくれしくれてふゆのよのにはもはたれにふるゆきのなほきえかへりとしことにときにつけつつあはれてふことをいひつつきみをのみちよにといはふよのひとのおもひするかのふしのねのもゆるおもひもあかすしてわかるるなみだふしころもおれるこころもやちくさのことのはことにすへらきのおほせかしこみまきまきのなかにつくすといせのうみのうらのしほかひひろひあつめとれりとすれとたまのをのみしかき心こころおもひあへすなほあらたまのとしをへておほみやにのみひさかたのひるよるわかすつかふとてかへりみもせぬわかよとのしのふくさおふるいたまあらみふるはるさめのもりやしぬらむ (原文が "ひらがな" であるのは、紀貫之さんが当時の男性歌人では珍しく "ひらがな" 表記を好んでされていたためです。)